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コラム(今月の言葉)|Column
わたし色のキャリアを紡ぐ3  忘れられない学生たち<ミッキーマウスボーイ>

前回と同じ大学の2年生のキャリアデザインの授業をしていた。この授業で単位が取れるとあって、興味の有無にかかわらず、とりあえず科目を取ったといった学生たちは多かった。しかし、単位を取るためには最後の授業でテーマが出され、その場で1000文字以上のレポートを書くことが条件だった。

キャリアデザインの授業も数回過ぎたころ、またもや個性的な学生が登場してきた。
彼は、赤いキャップを斜めにかぶり、ダボダボのズボンでもちろん腰骨よりも下にベルトの位置がある。大胆なミッキー柄がデザインされた大きなトレーナーを着ていた。いわゆるB系ファッションなのだろう。片方の耳には、大きなダイヤモンドもどきのピアスをして、一番前にちょこんと座っていた。

一番前に座っているのだが、見た目からは、やる気はほとんど感じられず、つまらなそうな表情を見せるだけだった。4,5人でグループワークをしても、会話はほとんど続かない。講義の最後に簡単なレポートを出席簿代わりに書いてもらうのだが、彼のコメントを見て愕然とした。すべてひらがな、そして文章は一行で終わっていた。内容は細かく覚えていないが「みんなとはなして、たのしかった」というものだった。

私が「彼はやる気がないのだ」と感じたのは間違いで、自分とタイプの違う人と初めてかかわりをもって、戸惑いを見せていたのかもしれない、とその時気づいた。次の週から、毎回おしゃれなB系ファッションを装って、ちょこんと一番前の席に腰かけていた。レポートは、相変わらずひらがなであったが、1行から2行にちょっと文章は増えていたが・・・。

しかし彼が単位を取るためには、1000文字以上のレポートを書かないと、単位は得られない。そこで、彼にそのことを告げた。彼は「え〜〜〜〜!そうなのですか。困ったな、そんな長い文は書いたことないよ」といって、黙り込んでしまった。私は、心に浮かんだことをそのまま書くことから始めればよい、自分の気持ちを言葉にしてみるようにとアドバイスをした。しかし、不安げな表情は変わらなかった。

しかしそんな話を聴いた後でも、彼は毎回出席をしていった。
そして、最終の試験の時間になった。始業チャイムが鳴りやんだ。
私は、今日はもしかすると来ないかなと思った矢先に、彼は教室に登場した。

そして、試験開始。教室からペンの走る音があちこちから響く中、彼は宙を眺めているばかりだった。30分が過ぎ、やっと彼は書き始めた。たどたどしい筆運びだが着々とマスを埋めている。試験時間は終了し、彼は何と1000字のレポート提出の条件を満たすことができた。私は、心から喝さいを送りたい気持ちであった。
試験が終わって、みんなが教室から出ていった後も、彼はなぜか教室に残っていた。

そして、初めて私のそばにきて「先生、僕ね、ミッキーを描くのがうまいんだよ。」といってにっこりとほほ笑んだ。「そんなにうまいのなら黒板に書いてよ」と頼むと、さらさらとデッサンもバッチリなミッキーが描かれた。本当にうまいのだった。

どうしてそんなにうまいのか尋ねると、小さい時からずっと書いているからと目を輝かせながら話してくれた。心から好きなことが分かった。そしてきっと理想のミッキーを描くために、練習を重ねただろうし、納得いくまで書き続けたのだろうと、彼のミッキーを見て理解できた。

愚直な気持ちの強さ。根気強くやり遂げる力を持っているミッキーマウスボーイがここにいた。やり続けることが、未来を変える。きっと彼は未来を切り開いていくだろう。
彼の本質を見た瞬間だった。



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